「……無理、するんじゃねぇぞ……黒永。」

「してねぇよ。行こうぜ。」

黒永はベッドから降り、俺の手を引っ張った。その後は何事もないように振る舞っていた。授業も、昼休みも、何もなかったように。でも少し、俺には違和感を感じるのは気のせいか?

「あ、そうだコウ!昨日雨に言ってただろ?放課後屋上って!今日どうすんだ?外大雨だぞ?」

「あ……そうだったな。」

朝から衝撃的な話を聞いて、すっかり忘れていた。

「2人きりで話がしたいのか?」

「あぁ、まあ……そう言うことだな。」

「それなら生徒会室はどうだ?」

「……へ?せ、生徒会…室?なんで?」

キョトンとしていると、田城と大葉が驚く。

「コウ知らねぇの!?」

「……ひょっとしてコウ、生徒総会寝てたか?」

「なんだそれ、知らねぇぞ。」

「この前体育館集まったじゃねぇか。もう忘れたのかコウ。」

記憶の糸をたどると、確かに体育館へ集まって何かをやっていた記憶がある。しかし、内容は全く覚えていない。恐らく寝ていただろう。

「この前の生徒総会で黒永が、舞台で生徒会長として話してたの聞いてなかったのか?」

「ごめん、俺もそのときは寝てたカモ……。でも!雨が生徒会長だってのは知ってるぞ!」

「へぇ~……そうだったのか。お前ってやっぱすごいやつなんだな。」

「5月いっぱいでこの権利は後輩に引き継がれるけどな。今のうちに権利乱用してやる。」

「会長サマァ?そんなことしていいんすかぁ?俺ら庶民の前でぇ。」

「……見逃せ、友人のためだ。」

「か~っくぃ~!さっすが雨!空気の読める男はイケメンだね!惚れ惚れするぜ☆」

そんな悪ふざけをしていると、昼休み終了のチャイムが鳴り響く。

「あ!昼休み終わっちまった~!次なんだっけ?」

「俺らに聞くんじゃねぇよ。お前理系クラスだろ。」

「あはっ!いつものクセが抜けなくてなぁ、うっかり聞いちまうんだよ!そんじゃあな!」

「じゃあな百。」

出入口に向かう田城は、ドアの前で思い出したように立ち止まると、俺を指差して告げる。

「コウ!雨と楽しめっ!!じゃあな!」

「……は?」

初めは意味が分からなかったが、ちょっとして理解する。

『あの野郎っ……なにもかもお見通しってか?くそがっ……!』

「……チッ……恥ずかしいやつめ……。」

「……?」

俺が呟くと、黒永と大葉は不思議そうな顔をした。

「────ほんとにいいのか?わざわざ部屋借りちまって。」

「いいんだ。どうせもうすぐ俺も解任だし、この時期生徒会は仕事もない。使っても大丈夫だろ。」

生徒会室の鍵を投げながら話す黒永についていく。

「……ここだ。」

廊下をずっと歩いて、校舎のかなり端の方にひっそりとある。ほとんど使われていない様子だった。

「適当な椅子に座ってくれ。ほこりっぽくて悪いな。めったに使わないから全く掃除してないんだ。」

「おぅ……。」

確かに少しほこりっぽくて、ちょっと整理されてないけど、話をするには全く問題はない。

「それで、話ってなんだ?」

「っ……あ……えっと……。」

俺は黒永と椅子1つ空けて隣に座った。いざ話そうとすると言葉が出ない。

『確認するって……何て言えば……!』

だんだん顔が熱くなってくる。時間がたつとさらに言葉が出ない。

「……俺も、四条に聞きたいことがある。」

「へ?」

「最近……なんで俺を避けてるんだ。」

「っ……さ、避けてない……。」

「ほら、また目そらした。どしたんだ?……俺、何かしたか?」

黒永はまた困り顔をした。

『……黒永が悪い訳じゃねぇのに……ほんとに俺は……俺の根性なしっ!!』

「俺はっ……!」
 
俺は椅子から勢いよく立ち上がって叫んだ。

「お前のっ……顔が見れねぇ……!」

「……?」

「お前見ると、この前あったこと思い出しちまうし……家帰っても、ずっと……お前のこと考えてるし……なぁ……。」

俺は黒永の方を向いた。

「俺っ……おかしくなっちまったのか?」

頭が熱でぐらぐらする。黒永の顔を直視出来ない。

「四条……お前……顔真っ赤だぞ。」

「っ……う、るせぇ……!」

『ほんと、うるせぇよ…心臓も……。』

目をきつくつぶって、胸辺りをきつく握って、心拍数を下げようとする。熱い……とても。もう溶けてしまいそうだ……苦しい……。

「これ……なんなんだよ……!もう、分かんねぇ……。」

「……。」

すると、椅子を引きずる音がする。黒永がこっちに来た。

「四条、それは好意か?それとも敵意か?」

「っ……それは……。」

『どちらかと言えば……。』

「こ……好意……。」

「じゃあ、お前は……俺のことが好きなのか?」

ドクンっと胸の中が大きく跳ね上がった。あいつの手が俺のあごを持ち上げる。

「好きって……どういう、好きなんだ?」

黒永の顔も赤みを帯びている。でも少し、笑っているような気もする。

「ちゃんと、言ってくれ……どうなんだ。」

心臓のスピードが上がる。体全体が心臓そのものになったみたいだった。無理やり目線を合わせられて言葉がうまく出ない。

「……心臓、すごい鳴ってるな……四条……触るだけで分かる。」

「っ……うる…せぇ……。」

俺の手を掴み、黒永は掴んだ手を自分の胸に当てた。ドクっ…ドクっ…と俺と同じくらいのスピードで鳴っている。

「俺も、すごい鳴ってる……お前と同じ……。」

『あぁ……恥ずかしい……けど、こいつも……。』

「四条……。」

『もう……どうにでもなれっ!!』

胸に当てられた手に力を込めて、黒永の服を引っ張った。体勢をすぐした黒永は、俺の肩を掴んだ。顔が近づいてくる。そして、口をふさいだ。

「っ!?」

「んっ……。」

俺は黒永とキスをした。

「……っはぁ……こういうことだ、バカ野郎……引いただろ……野郎がこんなことして……。」

「っ……ちょっと、びっくりした……けど。」

黒永は肩から手を離し、腕で口元を隠した。

「嫌じゃ、ないから……。」

予想外の回答にフリーズしてしまう。でも、ものすごく……。

『嬉しい……?』

「……それは嬉し涙ってことで、いいのか?」

俺はまた、涙を流していた。心の重荷がなくなってスッキリしたからか、いつのまにか抱えていたモヤモヤは消えていた。

「っ……はぁ……でも、言えて……よかった。」

「ほんと……コウは忙しいやつだな。」

黒永はクスッと笑う。

「なぁ四条、これって……告白されたってことで……いいのか?」

「……っ……そう…いうことになる……。」

『そうだ……答え……。』

「黒永……俺と……つ、付き合って…くれるか?……恋人として……。」

また心臓が高鳴る。黒永は少しの間、腰に手を当てて考える。『ごめんなさい』と言われるのが怖い。1分ほど待ったあと、口を開いた。

「……よろしく……四条。」

そう言うと黒永は両手を広げた。

「来い。」

俺は黒永の胸に飛び込んだ。その衝撃で黒永は壁へもたれた。優しく包み込み、頭を撫でてくれた。黒永の心臓は早く、強く鳴っていた。

「……これからは、コウって呼んだ方がいいか?」

「じゃあ俺は……雨……?」

「あぁ、よろしくな。」

「……キス……。」

「え……。」

「キス……しよ……。」

俺は黒永にキスを迫った。黒永は俺の思った以上の積極性に驚いているようだ。

「いいか……?」

黒永は黙ってうなずく。柔らかい紅の唇が重ねられ、思わず声がもれる。

「……っ…んっ……。」

時間がゆっくり流れているように感じられた。頭がボーッとする。息がうまく出来なくて、呼吸があがってしまう。

「ふっ……っ……はぁっ……はぁ……。」

「っ……ふぅ……俺からも……して、いいか……?」

「……うん……。」

「じゃあ、口……開けて……。」

『えっ……?』

俺は言われるままに口を開いた。そこに、少し熱いねっとりしたものが入ってきた。

「んぅっ……あ…ふぐっ……ぅ……。」

「んっ………んむ……っ……ふ………。」

粘りけのある音を部屋中に響かせ、熱い口付けを交わした。くちゅっ…ちゅぷっといやらしい音が耳の中を刺激した。微かにミントの香りが口の中に広がった。

「はっ……はぁっ……はぁっ……。」

「っ……その、必死な顔……たまんねぇな……。」

『えっ……?』

黒永はボソリと呟いた。俺の聞き間違いかと思ったが、確かに聞こえた。

「コウ、お前……いい声で啼くよな……。」

「あっ、雨……?」

黒永は笑っていた。目が据わり、口角が軽く上がって、少し息があがっていた。

「あのときから、ずっと……コウのこと考えてた……。」

「……え。」

「あれがあってから、俺もずっと……コウのこと考えてた。涙目で震える姿が目に焼き付いて、眠れなかった。初めてだ……こんなに、人に執着するのは……コウが可愛くて可愛くて……。」

黒永は俺の腰を引き寄せてあごを上げた。

「……食っちまいたいくらいだ……。」

衝撃的だ。黒永の口からこんな言葉が聞けるとは思わなかった。いつも無表情で感情の読めないやつだと思っていたが、こんなにも……野性的で男らしい姿を見るとは思わなかった。

「このままだとっ……俺、何かしそう……。」

『うわわわっ……こいつ……エロ……。』

余裕のない顔を見せた黒永に、俺の胸は高鳴った。

「あ…め……。」

俺は固まってしまった。でも黒永の一言で、また顔から火が出る。

「っ……ごめん……怒るなよ……勃った……。」

「……えっ!?」

「マジで……このままだと、お前のこと……襲いそう。」

言われてみれば、股間の辺りに若干の膨らみを感じる。黒永が少し前屈みになっているせいで熱い吐息が耳にかかる。

「流石にっ……学校では、まずいよな……クソッ……こりゃキツイ……っ。」

苦笑いをしながら震える黒永の姿は少しかわいく見えた。

『って何考えてんだっ!!』

「だ……大丈夫か?」

「ふー……大丈夫、多分……もう、帰るだけだし……なんとかなる……。」

俺から離れて壁伝いに床へと座り込んだ。

「しばらく、おとなしくしてれば収まる……。」

「……。」

黒永は肩で息をしていた。とても苦しそうだ。自分の力でなんとか手助けが出来ないか、必死に考えた。

『やっぱこれしか……思いつかねぇ。』

「なぁ……雨。」

「……?」

「このあと、時間あるか?」

黒永は黙ってうなずいた。俺はしゃがんで黒永の脚を強引に開いた。ベルトに手をかけると、黒永は俺の手を掴んだ。

「何してっ……!」

「ヌいてやる……おとなしくしてろ。」

「待て……っ……!」

俺は構わずベルトを緩めてチャックを下げた。黒永は声がもれないように口を押さえている。下着は少し濡れていた。

「ふっ……っ……。」

俺に首を振る黒永。俺は下着の上から触った。脈打っているそれは、触られるとピクッと反応する。そのたびに黒永は身体を震わせた。

「あのとき、俺がどんな気持ちだったか……分かったか?仕返しだっ……。」

俺は下着をズルッと脱がし、肉棒をあらわにさせる。

「あっ……く……!」

『……雨の……デカ……。』

俺は熱を帯びたそれをそっと触った。ヒクヒクと痙攣するそれは、今にも爆発しそうに思えた。

「……っ…ん……コウ………だ…め……っ……。」

涙目で首を振る黒永を見て、プツッと俺の理性は簡単に切れた。

『もっと……もっと見たい……もっと知りたい……雨のこと……。』

俺は黒永のものをくわえた。

「んんっ……!はっ……こ…コウ……っ……そんなっ……やめっ……!」

口のなかに独特な香りと苦味が広がる。むせ返りそうな熱と一緒に、あふれる液をすする。いやらしい音が部屋に響いた。

「やぁっ……よ…せ……汚い、から…っ……あっ……。」

黒永は俺の頭を押した。俺の口内から抜それが抜け、ドロっとした液体が口から流れ出た。