それは卒業式の日だった。
家に帰ろうとして、僕は
肝心の卒業証書を教室に忘れていた
ことに気付いて、教室まで戻った。
すると、廊下で彼女にばったり
会ったのだ。
そこでしばらく会話をしてから、僕は
「ごめん、結局好きだった」
と、小さな声で言った。
告白までの成り行きや、ごめん、の意味はよく分からないけど、
この言葉はハッキリと覚えている。
「遅いよ…」
確か、彼女からの返事はこうだった。
「好きだったけど、もう違う人が
好きになっちゃったよ」
こんなことも言われた、気がする。
その時の彼女の表情は、もう思い出せない。