「そんな訳ないだろ。
むしろ嫌いというより」

「うん」

「…いや、なんでもない」

「…うん」

告白してしまうのなら、今がそのとき
だと思ったが、俺にはやっぱり
その勇気は無かった。

ただ、電話を終わらせたくないので
何か言わないと、と話題を探す。

「あ、チョコケーキありがとう
美味しかった」

「チョコケーキじゃなくて、
ガトーショコラだから」

ふふ、と可笑しそうに彼女は笑うと
じゃあね、と言って電話を切った。