何を喋ったらいいかわからなくて、ただミサキちゃんを見た。


まだ家に帰っていないから、制服姿の右手にコンビニの袋を下げている。


すると

不意に今までひそめていた眉の力が抜け、弱々しい表情になった。


「ごめんなさいね」


「は?」


「明日香が迷惑かけて…」


その言葉で昼間のムカムカを思い出した。


「別に。
ミサキちゃんに謝られても…」


「ううん。
明日香の言葉を一瞬でも信じたわ…びっくりしたの。

心が理由もなく人に手を上げたりしない事も、誰よりも頑張り屋さんな事も、アタシ知ってるのに…最低ね。」



ミサキちゃんが話せば話すほど、泣きたくなる。


そうだよ、

ミサキちゃんの馬鹿!


そう責めてやりたいのに、喉が痛くて言葉が出ない。


「はい、これ」


そう言うと、ずっと手に持っていた白いビニール袋を差し出した。


声を出せない私は素直にそれを受け取る。


中を覗くと、そこにはアイスが何個か入っていた。


小豆色のカップに金色の蓋。


ハーゲンダッツだ。


びっくりして顔を上げると、ミサキちゃんが微笑んでいた。


「旭が俺が買うハメになるからお前が持ってけって。
心、チョコチップの入ったの好きでしょ?

…心配しなくてもさすがに、これで許してとは言わないわよ。」


やっぱりお兄ちゃんは魔術師だ。


その場にいなくても、人の心を操る。