櫻井家を出て3ヶ月…

その間におじさん達と会った時はいつも外食だったから、


この家は出て行った時振りだ。


リビングの家具の配置も

カーテンの色も

温かなこの家の匂いも


以前と何も変わってはいなかった。


「ご飯までゆっくりしててね」

「あ、手伝うよ!」

「いいのよ、後はよそうだけだから」


おばさんがおじさんのスーツの上着を受け取りながら、柔らかく答える。


そう言われて仕方なくソファーに座る。


何だかお客様になったみたいで落ち着かない。


「そうだ心、もうすぐ夏休みだな」

おじさんがネクタイを弛めながら、向かいに座った。

「何か予定はあるのか?」

「何にもー!夏休みはバイトの鬼になるよ」

顔をしかめてみせた。


「おっ頑張るなー!」


「やだわ、あなた!せっかくの夏休みなのに…心ちゃん、生活の事なら心配しなくていいのよ?」


「違うよおばさん!単にバイト先が人手不足なのよ」


「ほんとか?
おばさんの言うとおり、気を使うんじゃないぞ。」


おじさんが真剣な顔で話す。


「心配しなくても、
おじさん、お前達3人が成人するまでサポートする甲斐性なら持ってるつもりだ。

バイトに反対なんじゃない。心も高校生になったんだ、何かと金が必要な時もあるだろう。

けどな、今は学生にしか出来ない事をしなさい。

たまには、おじさんを頼ってくれよ。心はこの家の人間なんだから」


十分過ぎるくらい頼りにしてるよおじさん。


私たち兄妹が今日まで、何不自由なく生きてこれたのは、おじさんのおかげ。


誰にも恥ずかしくない、まっすぐな人生のレールに乗せてくれた。


本当に感謝しても、し尽くせないよ。


だからねおじさん。


私はおじさんが導いてくれたこの道を、これからは


歩きたいんだ。


自分の足で。