春の風



春の匂い



春の風景

何気なく過ごすこの日常が



春模様へ染められていく




私は音楽室の窓を開ける



フワッと、暖かい風が吹きかける



「…うぅ…やだよぉぉ……」




実はさっき、彼氏にふられた。


お前はつまんないって言われて。


心配症すぎる。鈍感。ヤらせてくれない。



そんな理由で。


私は窓に背中を向け、涙を拭う




「………え?」



私は涙を拭う瞬間に目が合った



そして、こちらをじーっと見ている



雪上 琉 先輩。


あまりにも長くこっちを見ていたから、どうしていいかわからず、目を逸らす



ガラガラ────



音楽室の扉が開き、ビクッとしてしまう



「ははっ。驚きすぎ」


私はなぜ琉先輩がここにいるのかわからず、ただ綺麗な顔を眺めるだけ




「……どうした?」


そう優しく声をかける琉先輩



でも、これでも初対面


私は見たことあると言っても、ほんとに一瞬


あの先輩かっこいいって噂なんだよって言われ、ちょっと見ただけ



「…名前…姫川桜…ね」



「…なっ、なんで」



私はなぜ知ってるのか、少し怖くなり思わず反応してしまった


すると、先輩はピアノを指さした



「…あ…」



「…やっぱり君だったんだね。Sakuraって」


そのピアノには『Sakura』というローマ字が掘られている



私のお父さんは音楽神とも呼ばれるほど有名なピアニスト


そして、ここの高校卒ということもあり、なぜだか私の名前が掘られている



最初は恥ずかしかったが


Sakura なんて名前の人何人もいるし、花もあるし

気にはしなくなった。



「…で、桜」




「…えっ…///」




「え?」



急に桜なんて、あんなかっこいい顔で呼ばれるから普通に照れる



「えと…はい。なんですか?」




「…なんで泣いてたの?」




「…へ……」


とぼけた声出すんじゃねえよって怒られる。


でも、さっきのことを思い出すと、また溢れ出してくる涙。




「…ふぇ。。うぅ…ひっく…」




「…あーあー、こんなに可愛い顔がだいなしだよ?」




「…えっ」



わたしは、ありえない言動に動きを止めた