「昨日のも美味しかったよ。ごちそうさま」
……へ?
「あれ石原さんが作ったんだよね」
もしかして違った?、と不安そうに七瀬君が聞いてきた。
「……違わ、ないけど、
どうしてそう思ったの?」
「味付けが違ったから。
いつものは、なんかご飯に合う味付けで
しっかりしてるけど、
昨日のは野菜の味を考えて味が付いてるっていう感じ。
だから石原さんが作ったのかなぁって」
「味付けが足りないってことか」
ちょっとふてくされるように言ってしまった。
「そうじゃなくて!
石原さんっぽい味付けだなって思ったんだよ。
バランスをちゃんと見て気遣えるとことかが!」
七瀬君が慌ててまくし立てる。
珍しい剣幕に、呆気に取られたように見ていると、
「違う、ごめん。
こういうことが言いたいんじゃなくて」
「うん」
いきなり彼が私を抱き締めるように手を回した。
そして耳元で、
「俺は佳奈の弁当が食べたい」
と囁いて、
後ろに守っていた弁当を、私の手からそっと取り上げた。