「やーっと追いついた。怖いからってお前ら歩くの速すぎだろ…」


その場に響いた啓人の声に、二人はホッとする。そして、振り返った千尋は啓人に文句を言っていた。


「追っかけてきたなら、もっと遠くから呼びかけてよ!幽霊かと思って怖かったんだから!」


千尋の文句を受け流し、啓人は階段を上る。受け流された千尋はというと、頬を膨らませながら啓人にくっついていった。


そんなこんなで辿り着いた教室の電気をつけ、コートを羽織りランドセルを背負う。二人が教室から出てきたのを確認した啓人が電気を消し、再び階段を下りていく。


そして、書初めの道具を取りにレクリエーションルームに戻った。


レクリエーションルームで待っていた谷が、戻ってきた三人を見て安堵したように微笑む。


「やっぱり渡瀬くんに行ってもらって良かったわ。学校とはいえ、女の子二人じゃ心配だものね」


微笑んだままそう言った谷に、百合が遠慮がちに言う。


「すみません、谷先生。帰る前にトイレ行ってきていいですか?」


「勿論よ、不二さん。荷物は置いていっていいから、また三人で行ってらっしゃい。渡瀬くんお願いね」


谷の言葉に、少々不満気な顔をした啓人を伴い、再びレクリエーションルームを出た。