書初めをやっていた部屋 ― 特別室、通称レクリエーションルーム ― を出た瞬間、千尋は後悔した。


中学生と違って部活など無いわけで、小学生がこんな残っているはずもなく、廊下は真っ暗だった。


しかも、レクリエーションルームは北校舎にあって、渡り廊下を通り教室に行かなければならない。


往復すると、10分はかかる。時間的にはまだ夜ではないものの、12月の5時はすでに日が沈み真っ暗だ。


夕方、というより、もはや夜だった。まさに、学校の怪談…


そんなことをつらつらと考えながら、しばらく二人とも無言で歩いていた―――


そうして、話は冒頭に戻る。


「そうだね… というか、啓人に着いてきてもらえばよかった。どうせ待たせたって文句言うんだろうし」


千尋が百合の言葉に反応した次の瞬間だった。


―――タタタタッ


二人以外に誰もいないはず廊下に、突然音が響きわたった。渡り廊下を無事通過し、階段を登ろうとしていた二人は硬直し、足が止まる。


二人分の足音が消えたにもかかわらず、 音は続いていた。付け加えるならば、音は止むどころか、段々大きくなっていく。


近づいてきた!と思ったその直後――