氷は今日もまた、独りで帰路に着いた。
氷自身に孤独感などはなく、辺りを見ながらいつも通りの道を歩いた。
そしておもむろにポケットに手をいれ、何かを取り出した。
ビー玉のような小さな水晶。
中には“ネリネ”と呼ばれる花が入っていた。
ネリネの花言葉は『また会う日まで』。
水晶の色は水色、ネリネ自体は氷の瞳と同じ薄ピンク。
その水晶を氷は大切そうに手で包み込む。

もうすぐ家に着く頃、氷はある違和感を覚えた。
その違和感は、異世界“クレオメ”への扉がすぐ近くにあることを意味していた。
辺りを見渡し、クレオメへの扉を探した。
異世界“クレオメ”には様々な環境がある。
ジャングルや暗闇、魔法の世界、モンスターや現世界に存在しないものが存在しているなどである。

すると、そこには青黒い異空間があった。
「あれか!」
氷は先程の水晶を左手首のブレス“ミルトニア”に装着する。
「ブレス確認。対象、クレオニ形成。起動。転送します。」
機械声が終わると耳障りな高音とともに氷の身体は光に包まれた。
どこからか、ゴーグルを装着し、氷はクレオメへと消えていった。