そんな私の思いが通じたのか椅子に深く座って足を組み、肩肘を机につく。


「丸一日は寝ていたよ。ちなみに今は夜だ。


きっと精神的ストレスから熱が出たんじゃないかな。

俺はこう見えても医者でね。」

怪訝な顔をすれば、苦笑いしながら医師免許証を見せる。


「それで、君をここに運んだ男は俺と知り合いなんだ。

ま、近々会えるよ。」




『近々』

この時の私は、その意味をまだ何も知らなかった。



ピピッ

37.2度か…。少し高いが大したことはない。


体温計を返して、部屋を見渡す。



難しそうな分厚い本が大量に並べられた本棚や、資料がまとめられたファイルなどが入ったダンボールが沢山あった。

そして5個6個アタッシュケースが無造作に置かれていた。

1つしかない窓は黒のカーテンで潰されており、スタンドライトは唯一この部屋を照らす照明になっている。