散々暴力を振るわれてきてもその言葉を聞いたのは初めてだった。
だから耐えてこれた部分もあったのかもしれない。
ただ、私は限界だった。
母が家を出た音を聞いて私は堰を切ったように自室に戻ってボストンバッグに服を詰め込む。
出ていこう。
初めて私がこの家とさよならをしようと思った時だった。
それまでは意地でも出たくなかった。
産んでくれた母を忘れそうな気がして…。
でももう限界だ。
ふらつく体に力をいれて1冊のアルバムを手に取りペラペラとページをめくる。
笑う父と死んでしまった母
こんな笑顔を見せる父は、楽しそうな家族はどこへいったのか。
私は、母と私が写っているツーショット写真だけを引き抜いてカバンに詰めた。