誰も居なくなった家
本来寂しいはずの静かな家は、私にとって心地よかった。
やっと…、やっと1人になった。
ため息をついて父の為に作った朝ごはんを食べる。
私を産んでくれた母はとうの昔に家を出ていってしまった。
正確には、精神的に病んで喋れなくなった母を気味悪がり、追い出されたのだが。
その頃幼かった私は詳しい事は知らない。
ただ、一緒に私も連れていこうとした母を殴って意地でも私をこの家に居させたことは確かだ。
母に似た私でストレス発散をする為だけに。
母の顔はこの目で見たことは無い。
初めて見た母は写真の中で笑っていて優しそうな人だった。
でもそんな母もきっと父の女癖の悪さに限界を感じたのだろう。
今の母は父の愛人だ。
彼女も母のことを嫌っていたし、その娘の私のことも嫌っている。
父は母に似ている私に怒りを感じるらしい。
そんな2人から逃げる術もなく毎日罵倒と暴力の日々