「……。」

「あ、あの…南くん。」


教室に入ってからも、私の手を握りしめたままの南くん。


でも、何かを考えたように動かなくなってしまった。


「……わ、私たち…付き合ってる、よね?夢じゃないんだよね?!」


私は自分だけじゃもう、夢か現実か分からなくなってしまった”付き合ってるのか”という疑問を南くんに伝えると同時に


———ギュッ

南くんに掴まれている方とは反対の手で、無意識に南くんのワイシャツの袖を握りしめていた。



「……夢でたまるかよ。」

「…へ?……じゃ、じゃあ…」

「俺があんだけ勇気出したのに、夢オチにされたら困るんだけど。」

「…〜っ!」


不機嫌とも、照れ隠しとも取れるその表情に一瞬で満たされる。


あんなに夢かもしれない…って不安に思ってたくせに、まるで嘘みたいに溶けて消えていく。



「……佑麻、」

「な、なに?」


名前を呼びながら、私へと小さな箱を差し出す南くん。


その箱は、私の手のひらの中にストンと収まって…


「…あ、開けていいの?」

「ん。」


静かに箱を開ければ…そこには


「…っか、可愛い〜!!!!」


真ん中がリボンのモチーフになっていて、リボンの真ん中と、リボンの両サイドにはそれぞれキラキラと小さな石が輝いている

—————ピンキーリング。


「…あげてなかったから、誕プレ。」


あのクールな南くんが、私のためにどれだけ勇気を出して買いに行ってくれたんだろう。


「……ありがとう!!すごい、すごい嬉しい!!!」

「…ふっ…ちゃんと付けとけよ。虫除け。」


そう言って、箱から指輪を取り出すと私の右手の小指へと滑らせた。