あれから、”寒いから送っていく”と言った俺に”もう少し…”と天然上目遣いの佑麻を引き剥がし


佑麻の家までを並んで歩く。


一瞬、”もう少し…”に負けそうになった自分に嫌悪感を抱きながらも


隣で嬉しそうにペラペラ話す佑麻を見てると、俺の葛藤がばからしく思えてくる。


本当、天然無自覚って厄介。
絶対そんなやつだけはごめんだって思ってたのに、まんまとハマってる。


「それでね?黒崎ちゃんと山田くん無事に付き合うことになったんだって!」


「へぇ〜。」

「お似合いだよね!黒崎ちゃんから告白しようとしてたのに、山田くんに逆告白されたんだって!」


自分のことのように喜ぶ佑麻。


「やっぱり、告白されたら嬉しいもん?」


なんて、珍しく相槌以外のリアクションを返した俺に


「んー、そりゃ好きだって言われたら嬉しいし…相手のこと少しは気になるかな〜?」


って。


「じゃあ、俊哉と嶋中のこと…気になるわけ?」

「へ?!…あ、いや…。気にならないって言ったら嘘になるけど、私は南くん一筋だから、ね?!」



”気にならないって言ったら嘘になる”のかよ。


「あっそ。」


何それ、かなり気に入らないんだけど。


「え?…南くん怒って「ない。」


俺の態度に、焦りを見せる佑麻。
違う。こんな態度を取りたいんじゃないのに。


「…本当に南くんの事だけ好きなのに。」

「じゃ…俺とキスした回数は?」

「へ…?な、何その質問…」

「いいから、答えろよ。」


暗くてもわかるほど顔を真っ赤に染めた佑麻に、口角を上げる俺。


「…2、2回…。」

佑麻が恥ずかしそうに答えた回数と


「…ばーか、3回だろ。」


俺が記憶してる回数は、違う。