「…ん、やる。」

「ほぇ……?」


そう言って南くんはテーブルの上でガトーショコラのお皿をスライドさせて木苺タルトの隣へと並べた。


やるって………


「み、南くん一口しか食べてないよ!?」


は、半分って言ってたのに…これじゃ全部貰ったようなもんだ。


「食べたかったんでしょ、ガトーショコラ。」

「…う、うん…木苺タルトと最後まで迷っ…て!なんで分かったの?!」


確かに、ガトーショコラにしようか木苺タルトにしようか最後の最後まで迷ってはいたけど、口に出してないよ私!


どっちでもいいから早くしろ、なんて南くんに言われて呆れられたら…って

優柔不断なりに頑張って決めたのに…


「だから言ったじゃん。お前、自分が思ってる以上に分かりやすいって。」


「そ、…そんな……」


じゃあ、南くんは私が木苺タルトとガトーショコラで悩みまくってるの知っててわざわざ、私にくれる為だけにガトーショコラにしてくれたってこと?


もし私がガトーショコラを選んでたら、木苺タルト…選んでくれたってこと?


何それ!!!
そんな優しい事ってあり?


「み、南ぐぅ〜〜ん!!」

「うっせ、早く食え。」

「もっだいなぐで、だべられない〜!」

「……はぁ。本当、手がかかるやつ。」


だって、南くんが私のために頼んでくれたガトーショコラだもん。

そう簡単に食べてたまるか。


「…み、南くん?」


そんな事を考えていたら、南くんは自分の使っていたフォークでガトーショコラを一口分すくうと…


「ほら、食わせてやるから。」

「なっっっ?!///」


何をしてるんだこの人は!!!
食わせてやるからって何語だっけ?!あれこれ何だっけ?



「早く口開けろ、ほら。」

「〜〜〜〜っ、じ、自分で食べます!!」

「いいよ、ほら。早く。」


こ、こここの人、分かってやってる。間違いなく私の反応を楽しんでやがる。


間違いない、ドエスだ。