ギュッ
「…ふ、うぅ…み、なみく…ぅ〜」
ソファに座っていた私の体は、軽々と南くんによって引き寄せられ、すっぽりと南くんの腕の中に収まってしまった。
驚くとか、ドキドキするとか、そんな感情は1つもなくて今はただ、あったかくて…安心する。
ギュッっと回された腕が嬉しくて、私も負けじと抱きしめ返せば
「で、何があった?」
諭すような南くんの言葉に私はゆっくり今さっき起きた出来事や自分の気持ちを打ち明けた。
怖い…苦しい…悲しい…切ない。
そんな気持ちを全部聞いたあとで、南くんが口にしたのは
「嶋中にとっても、工藤にとっても、お前じゃない運命の相手がいる。お前に振られたくらいで死ぬわけじゃない。」
なんて、憎まれ口にも近い言葉だったけど、その言葉を聞いて…確かにって思った。
自分が振ったら可哀想。
どこかでそんな気持ちさえ抱いてた。でも、そっか…私なんかよりずっと、素敵な運命の人があの2人にはいるのか。
なら、私は遠慮せずに…自分の気持ちだけを大事にすればいい。
私なんか次の恋への踏み台にしてくれればいい。
「…南くん。恋愛カウンセラーとか、始めない?」
きっと儲かると思うんだ。
私みたいに1人で色々考えてから回ってる女子は他にも沢山いるはずだし…
「…怒るよ?」
「ご、ごめんなさい。」
じょ、冗談だよ南くん…
疑問系なところが地味に怖いです。