そうですか、私は襲わないですか。


「…キスしたくせに。」

「………………。」


シカトですか。
都合の悪いことは耳に入りませんか。


なるほど、南くんの中であのキスはなかった事にしたいものなのかな。


だって、好きでもないやつとはキス出来ないって…告白されてた時に言ってたもんね。


つまり、私へのキス=魔が差した


「みんなで写真撮ったら、着替えて次行こうよ〜!」


茉央ちゃんの声にハッとして、顔を上げれば、おいでおいでと手招きしている。


「行こう、南くん。」


私は南くんを置いて、先に茉央ちゃん達の方へと歩き出した。


南くんのバカ。
南くんのアホ。
南くんなんか、明日の大阪自主研修でたこ焼きの具にでもされちまえ。


それはたこ焼きじゃなくて、南焼きですけどね!!


南くんにとっては何でもないキス。
私にとっては大事なファーストキス。


この差が、私と南くんの気持ちの差。きっと埋まらない…埋められないんだ。



「はい、撮りますね?ハイチーズ」



ーーーーーパシャッ


6人で写った写真、隣には当たり前のように南くんがいる。

どうして近くにいるんだろう。
……嫌ならとことん突き放してくれればいいのに。

どうしてこんなに好きなんだろう。
…苦しいなら、もうやめてしまえばいいのに。


……そう思うのに、諦めきれない。


そんな気持ちを、人は恋と言うのかな。