「いや、無理。」
「え?」
「全部声に出てたし。」
「えぇぇえ!!!!」
「……俺は思わせぶり、ね。」
「…うぅ…で、でもそれは本当だもん。」
「計算かもしれねぇけど、な。」
ーーーーーーキーンコーンカーン
最後の言葉は、予鈴のチャイムによってかき消されて私の耳には届かなかった。
「南くん、最後の!なんて言った?」
「早く戻んぞ。」
「えー!ちょっと、南くん!!」
ちょっとずつ、ちょっとずつ、南くんとの距離が縮まってくれればいいな。
自分の席について、南くんを見つめれば涼しい顔で教科書を取り出した。
そして、ふと動きが止まり…振り返る。
”ばーか”
「っ!」
南くんには、やっぱり勝てない。