校門を出たところで足を止めざるえをなかった。どこへ向かえばいいんだろう。
鳩ののどやかな鳴き声が耳に馴染む。
「道、忘れた?こっち」
校門を出て右、学校の裏山へと続く道だ。そしてその道は皆が噂する赤百合屋敷への道でもある。
何故瀬川は当たり前のようにそっちへ行くのだろう。そもそも『忘れた?』って、そこへ行くのが当たり前みたいに……。
「行かない」
私より先に前を歩き始めた瀬川に告げる。
ふわっとクチナシの香りが残る。懐かしい香りだ。男性でこんな香りを漂わせるのは瀬川が二人目だ。
だからかどうしてもつないで考えてしまう。いや、事実何かしらあるのは間違いないだろう。
「何故?」
小首をかしげて振り向き、立ち止まる。
「あんたが嫌いだから」
何故こんなことを口走ったのかわからない。そんなこと微塵も考えてはいなかった。ただ瀬川と赤百合屋敷に行くことだけは避けたかった。
「関係ない」
私の意見なんてどうでもいいかのようにそれだけ。
「別にそこに行かなくたって構わないでしょ?なんでわざわざ、そんなところに……。」
「ここで話してもいいの?橘伊吹。」
息ができない。苦しい。あの時のことが掘り起こされるみたいに……。
「っ……!」
焦れたように瀬川は私の手首をつかみ、引っ張り歩き出す。
鳩たちが一斉に飛び立つ。
表情は変わらずぼーっとしているだけのように見えるのに、どことなく怒りを感じるところがある。それが目つきなのか雰囲気なのか、あるいはもっと別のものかはわからない。
「離して」
「嫌だ」
私はその手を振り解けなかった。振りほどかなかった。
鳩ののどやかな鳴き声が耳に馴染む。
「道、忘れた?こっち」
校門を出て右、学校の裏山へと続く道だ。そしてその道は皆が噂する赤百合屋敷への道でもある。
何故瀬川は当たり前のようにそっちへ行くのだろう。そもそも『忘れた?』って、そこへ行くのが当たり前みたいに……。
「行かない」
私より先に前を歩き始めた瀬川に告げる。
ふわっとクチナシの香りが残る。懐かしい香りだ。男性でこんな香りを漂わせるのは瀬川が二人目だ。
だからかどうしてもつないで考えてしまう。いや、事実何かしらあるのは間違いないだろう。
「何故?」
小首をかしげて振り向き、立ち止まる。
「あんたが嫌いだから」
何故こんなことを口走ったのかわからない。そんなこと微塵も考えてはいなかった。ただ瀬川と赤百合屋敷に行くことだけは避けたかった。
「関係ない」
私の意見なんてどうでもいいかのようにそれだけ。
「別にそこに行かなくたって構わないでしょ?なんでわざわざ、そんなところに……。」
「ここで話してもいいの?橘伊吹。」
息ができない。苦しい。あの時のことが掘り起こされるみたいに……。
「っ……!」
焦れたように瀬川は私の手首をつかみ、引っ張り歩き出す。
鳩たちが一斉に飛び立つ。
表情は変わらずぼーっとしているだけのように見えるのに、どことなく怒りを感じるところがある。それが目つきなのか雰囲気なのか、あるいはもっと別のものかはわからない。
「離して」
「嫌だ」
私はその手を振り解けなかった。振りほどかなかった。