あたふたしている私に気付かず谷田さんはキョトンとした顔でこっちに向かってきた

「なんすか?」

なんて言いながら営業課長の側へ

会社の作業着じゃない谷田さんはかなりカッコいい

シュッとした体にロンTをさらりと一枚着こなして

とても私と一回りも年齢が離れたアラフォーには見えなくて

私は相変わらずドキドキしていた

「ちょっとここ座れ!!!」

営業課長が谷田さんを私の隣のわずかなスペースへ誘導する

嫌な顔一つせず私の隣に来てくれた事にひとまずホッとする

「樋山がお前の事タイプらしい」

「マジすか!?まいったなぁ~」

なんて嘘かまことか谷田さんは満更でもなさげに笑ってくれた

「お前も樋山の事気に入ってるだろーが」

「どっちかって言うと妹みたいでかわいいなーとは思ってる感じすよ~」

営業課長の切り込みに谷田さんはそう返事をした

「ま、後は若い二人でよろしくやってくれ」

そう言って営業課長は別の席に移動していった

周りは周りで盛り上がる中、私と谷田さんは取り残された

何だか気まずい中

「さっきの話ホント?」

谷田さんに突っ込まれる

「ホントです!!!」私は素直に答える事にした

「絶対嘘だろー」

谷田さんは笑う

「ホントですよー!!!私の憧れです!!!」

私も緊張がほぐれて笑った

谷田さんを戸惑わせてしまったのかすぐに話題を変えられた

普段、休みは何してるとかこんな事が好きだとか…

「服買うのが好きなんです!めちゃくちゃ買っちゃう!!」

「あー…そんな感じする」

話は弾んでいた

すぐ側には色んな社員達が盛り上がる

いつ誰に邪魔されてもおかしくないと私は内心焦っていた

運良く川本さんの所には完全に酔っぱらった安野さんがいて

若い男の人に飲み会のノリとは言えチヤホヤされてる川本さんは凄く上機嫌だった

川本さんの目はこちらに向かないはず

安野さんには凄く感謝だ


私はその日、歓迎会が終わるまでずっと谷田さんの側にいた

営業課長には本当にいい時間を作ってもらった