「あたしと距離を置こうとする周りの奴らとは違った。雅人にはいっぱい助けてもらった…」



そこからは言葉に詰まり、歩は何も喋らなくなった。



裏切られても尚、信じ続けている。いや、“信じたい”と思っている。


俺だって分かるくらい、気持ちが滲み出ていた。


俺は喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。


「最低なあいつの何がいい」
「どうしてそこまで大切に思うんだ」


怒りに任せて言ってしまいたいことは色々あった。


でも、本当につらかった時、そばで助けてやったのは。
支えてやったのは。

きっと、紛れもなく“あいつ”なんだ。




「…でも結局同じなんだね。男ってそういうことしか考えてない。“あたし”を見てくれないの。必要なのは体だけなの?」




歩は今まで見せなかった涙を、初めて見せた。


いつも強くあろうとして、気を張って。


それが一瞬で崩れたように見えた。


…それは今言うことなのか、この期に及んでまだ馬鹿なことを言うのか、と思われるかもしれない。