部屋に着いて間もなく。


じーちゃんが、さっきまで賢が使っていたグラスを片付けに来た。




「あ、ついでになんか持ってきて!」


「かしこまりました」




出ていくのを見届け、歩に視線を移す。



初めて見る私服。



女のファッションはよく分からないが、綺麗系の歩はこういうシンプルな服装が似合うと思った。




「…じゃなくて!」


「は?」


「なんで来たんだよ!」




そう! 問題はそこ!!




「しかも場所──」


「あぁ。たまたま永井くんと会って」


「賢と?」


「教えてくれたから来た」




へぇ〜…賢と会ったのか。


そりゃすごい偶然…




「じゃなくて!!」


「まだあんの!?」


「なんで俺んち来たのか聞いてんの!」




だから問題はそこなんだって。




歩は「…とりあえず、これ」と言って鞄の中から包みを取り出した。



俺は素直に受け取る。




「アンタが停学になったの、あたしのせいじゃん。だから…」


「え、お詫び?」




小さく頷く歩。




「別にいーのに」