出たよ、この素早い話題転換。
「つーかなんで美人だって分んだよ!」
「バカかお前。防犯カメラだか監視カメラだかで見えてるわ」
せめてそれが隠しカメラでないことを祈る。
「待たせてんだよ! 用ねーなら行くかんなっ」
腕を思いっきり振って親父から離れると、ドタドタと玄関へ向かった。
後ろから聞こえてきた、「あとで家庭訪問な」という意味不明な言葉は、当然無視した。
思いがけないトラップに時間をロスしたが、なんとか玄関ホールに辿り着いた。
そこに俯きがちに立っていた歩を見て、ようやく“現実”であることを実感した。
名前を呼ぶと、歩が顔を上げる。
視線が絡まる。
一気に緊張が高まる。
「あ…、お邪魔…します」
私服を着ているところを見ると、今日も学校に行っていないらしい。
でも、どーして俺んちに?
「まぁ…とりあえず入れよ」
戸惑いながらも歩を中へ招き入れる。
廊下を歩いている時、どこか落ち着きなさそうに辺りを見回していた。