そして賢に、あの出来事を話した。
───
「あ〜…それでか」
「あと2、3発は殴りたかったけど…歩が止めるから」
「水谷はそいつを庇ったってわけ?」
「どんだけ好きなんだよマジで」
なんで庇うんだ?
意味が分からない。
「確かに不思議だよな。水谷が1人の男に執着するなんて」
賢はテーブルに頬杖をついて考え込んだ。
「なんかあったんじゃねーの」
「あ?」
「男嫌いの水谷を、惚れさせるきっかけみたいなのがさ」
きっかけねぇ。
あったら知りたい。
「とりあえずいーや。つか歩学校来てる?」
「俺は見てない…」
さすがに来れないか。
どーにかして気分を盛り上げてやりたいけど、今は鬱陶しいだけだろうからやめとこう。
「じゃあ俺これから用あっから、帰るわ」
「おう、サンキューな! 寂しいからまた来てね!」
賢は「…気が向いたらな」と、相変わらず冗談の通じない返事をして帰っていった。
…歩、今何してんだろ。
泣いてないといいけどな。