「ごめんね…立てる?」




歩が差し伸べた手を鬱陶しそうに払いのけると、ふらつく足で立ち上がり、俺を睨み付ける。




「雅人、もう行こうよ」




女が腕を掴むと、それに頷いて去っていった。



歩はゆっくりと手を下ろす。




「あゆ……」




呼びかけた時。



冷たいコンクリートにポタッと雫が落ちた。



流れる涙を乱暴に拭い、歩き出す。




「おい!」




歩は引き止める声に振り返らなかった。