拳を振り上げた俺の腕にしがみ付く歩。
「やめて!!」
「っんでだよ!? ぶっ飛ばさねーと気が済まねんだよ!!」
「あたしが嫌なの!!」
歩は腕にしがみ付いたまま大声で叫ぶ。
…なんで。
好きだからか?
こんなこと言われて、まだ信じるのか?
力の抜けた俺を見て、“雅人”は高笑いをした。
「歩さぁ、そいつと仲良くやってけば?」
「雅人…っ」
「生憎だけど、俺もう彼女いっから」
隣の女の肩を抱いて、にっこり笑ってみせる。
「お前には用ねぇよ」
すっと横を通り過ぎる2人。
「あ、そうそう」
そして立ち止まると。
「ヤラせてくんねぇ女って、正直面倒なんだよな」
──何かが、音を立てて切れた。