笑みが零れる。




「俺ん家は〜…」




言葉の途中。


隣を歩く歩の足がピタリと止まった。




「…おい?」




呼びかけても返事はない。


ただ一点を見つめたまま、化石のように動かなくなった。



俺は自然と歩の視線を辿る。



その先には、見知らぬ男女の姿があった。




…いや、違う。


見たことある。



左側にいる男。




「…雅人?」




ぽつりと歩の口から出た、男の名前。



後ろ姿しか見たことないけど、写真の顔ははっきり覚えている。



そうだ。
コイツの彼氏…。




「あ、歩?」




暗くて気付かなかったのか、そのままゆっくりと向かってきた2人。



最悪の場面で出くわしてしまった“雅人”は、引きつった表情で歩の名前を呟いた。




「雅人〜、これが噂のアユムちゃん?」




とりあえずやばいことだけは分かるこの状況で、空気の読めない甘ったるい声を出す“雅人”の隣の女。



歩とは違う、派手なだけの女。




「……雅人…?」




いつもの強気な歩はいなかった。



震えた声。