小さく溜め息をついた歩はそのまま何事もなかったかのように路地を出た。




「えっ1人で行くん!?」


「当たり前じゃん」


「俺送る!」




いつもなら「ふざけんな」とかなんとか言って嫌がるだろうけど、この時はやけに素直に頷いた。



コイツも女なんだなー…なんて。



…まぁそりゃそうか。


男嫌いな上にナンパなんかされたらたまったもんじゃねーし。



俺は歩調を合わせながら、隣を盗み見る。



心なしか震えているような気がした。




「…彼氏は? 毎日迎え来るとかねーの?」


「バイトで忙しいから」


「ふぅん…。今日も?」


「そーだよ」


「我慢出来るほどマジなんだなー。寂しくね?」


「…しょうがないもん」




否定はしなかった。


ただ歩の震えは少し収まっていた。



これを見ると彼氏は相当支えになっているらしい。




「…喧嘩強いの?」


「俺?」


「逃げたからちょっと意外だった」


「あー…アイツらぶっ飛ばしたら俺が親父にぶっ飛ばされっから。ああ見えて血の気多いんだぞ」


「お父さん優しそうなの?」