「アンタってさ、女バカにしてるよね。あたしなら絶対無理」
調子が出てきたらしく、どんどん毒舌になっていく。
聞いてはいたが、反論することも出来なかった。
だから黙った。
一通り言い終わると歩はお茶を飲んだ。
その後携帯を開きすぐに閉じた。
「…メール待ってんの?」
開けたり閉めたりを繰り返す歩に、何気なく問いかける。
「うん」と短い答えが返ってくる。
「お前の彼氏ってどんな奴?」
「なんで言わなきゃいけないの」
「教えるくらい良いじゃん。ケチ」
歩が眉を寄せて「小学生かよ」と睨んだ時。
チカチカと携帯のランプが光った。
それを取って開こうとするのを阻止するように、歩の手ごと掴む。
「何!? 放せよ!」
「俺の名前呼んだら放してやる」
ずっと気になってた。
こいつ、俺の名前1回も呼んだことない。
「意味分かんないから」
「だからそのまんまの意味だっつの。名前呼んだら放す」
更に手を握る力を強める。