「あの…あたし、東條先輩のことずっとかっこいいなって思ってて」
「………」
「先輩が特定の人と付き合わないことは知ってます…。けど、どうしても諦められなくて」
そいつは一呼吸置くと、とんでもないことを言い出した。
「だからっ…セフレにして下さい!!」
………。
数秒間、沈黙に包まれた。
そいつはどっちかっつーと可愛い系で。
顔に似合わないことを言うもんだから、俺は固まってしまった。
「えーと…、その件なんだけど」
「先輩の言う通りにします! 体の関係でも良いんです!!」
「いや待て早まるな」
必死に訴えるのを遮るように手を前に出す。
ぶっちゃけこういう奴は初めてだった。
対応の仕方が分からない。
けど──
「俺はやめとけよ」
「なんでですか?」
「…なんつーか。そういうことしたくねーし」
どう断るべきか迷ったけど、なるべく傷付かないような言い方をしたつもり。
唇をギュッと噛み締め、俯く女。
しばらく沈黙した後、「分かりました」と言った。