袋に詰め込まれたパンやおにぎりを持ち、教室に戻る。
その途中、数人の女生徒が溜まっているのを見かけた。
賢に奪われそうなパンを死守していた時。
「あ、あのっ…」
その中の1人が声をかけてきた。
一瞬怯んだ俺の手元から素早くパンを抜き取る賢。
「あってめぇ!!」
「ほら、話しかけられてんぞ」
「え? 俺!?」
どうやら1年らしい女は、こくんと頷いた。
賢にも親父にも「鈍い」と言われた俺だけど、さすがにこの時はピンと来た。
「あ〜じゃあ先行ってて」
「はいよ」
恐らくこれで女の望み通り。
「ここじゃちょっと…。屋上に来てもらえますか?」
「あーい」
その1年は俯きがちに歩いていく。
後ろからは「頑張れ!」と小さな激励の言葉が聞こえる。
…それじゃバレバレだろ。
屋上に着いてから、その1年は黙りこくったままこちらに向き直った。
「…で、なんでしょーか」
白々しく話を振ると「あ、はい」と言ってもごもごと喋りだした。