翌日。
賢のラブコールよりも早く目覚めた。
洗面所に行って顔を洗い、いつものように支度をする。
学校に着いたのは8時20分。
「え、奈津? 今日どーしたんだよ!?」
たった今電話するところだったらしい賢は、携帯を閉じて目を見開いた。
「なんとなく」
「いつもそーしろよ。頭でも打ったんじゃね?」
「そういや昨日殴られた」
「…律さんか?」
賢は苦笑いしていた。
席に着いて、学生のものとは思えないほど軽い鞄を下ろす。
そして頬杖をついて言う。
「俺が悟りを開けんのはいつになんのかなー」
「…マジで大丈夫か。宗教にでも染まったのか」
「まぁそんなとこ」
軽く流してぼけっと前を見る。
やっぱよく分かんねーな。
親父の宗教。
昼休み。
購買に行ってパンとおにぎりを買う。
「ちょ…奈津。お前買いすぎじゃね?」
両手いっぱいになるほどの昼飯を横目で見て、賢が独り言のように呟く。
「育ち盛りですから」
「いやそれにしても」