本当に笑ってるし。
「つかさっき気付いたんだよ」
「惚れてることに?」
親父は煙草を取り出し「鈍いな」と、賢と同じことを言った。
コイツに言われると腹立つ。
「なんで気付いたんだ?」
「男と歩いてんの見た。そしたら妙にムカついた」
まさか自分がこんな風に思うなんて…この先ずっと、一生ないと思ってた。
今までもなかった。
だから今、やり場のない感情をどこにぶつければ良いのか分からない。
「…それで?」
「それでって…」
「お前はなんかしたのか?」
親父は煙を吐き出しながら、俺の目を見据えた。
─「なんかしたのか?」─
…何もしていない。
「ほらな。まだ何もしてねぇじゃん。うじうじしててらしくねぇぞ?」
「………」
「お前の良いところは“思い立ったら即行動”。少ない長所をこういうので生かさなきゃ、いつ生かすんだ」
「………」
「始める前から悩んでんなよ。どうせ頭であれこれ考えたって、答えなんか出やしねぇ。思うように行動してみろ」