親父は軽く復讐を誓っている俺を、ずるずる引きずって“説教部屋”へと連れ込んだ。
そして説教を始める…
と思いきや。
「お前なんかあったのか?」
さっきとは打って変わって、口調が優しくなったというか真剣になった。
ある意味こっちの方が怖ぇ。
「は? なんもねーし」
「いつもなら俺に殴られたりしねぇから」
「まぁ…あんなパンチ食らう方がおかしいよな」
「殴られた後に言われても説得力ないんスけど」
冷静なツッコミに反撃する気力もなく、「はぁ…」と盛大な溜め息をついた。
「学校でいじめられてるとか?
…は、ねぇか。お前そんなことされたら殴り返すもんな。
あ、あれか。女にフラれたとか!」
意志とは関係なく、肩がぴくりと反応する。
「え? マジ」
「フラれてねーよ。つーかすぐ女って決め付けんな!」
「いやぁ、だってお前。女と喧嘩くらいしかないだろうが」
また言い返せない。
「どうなっちゃったわけ。本気の女出来たの?」
「…さっきな」
「さっき!? それで本気とか笑わすなや!」