「おかえりなさいませ、奈津様」




思い足取りでなんとか家に辿り着いた俺。



丁寧にお辞儀をしたじーちゃんに鞄を手渡す。




「…どうかされましたか?」


「あぁー別に」




情けねぇ。
じーちゃんに気遣われてる。




「左様でございますか。今日は律(りつ)様がおかえりになられていますので…」


「──はぁ!?」




思わずでかい声を出した。




「今親父帰ってんの!?」


「はい。顔を見せるようにと…」


「マジ勘弁──」


「何を勘弁しろって?」




さっさと自分の部屋に行こうと、言いかけた時。



背後から低い声がした。




「………」




恐る恐る振り返ると…
腕を組んで仁王立ちする親父がいた。



次の瞬間には、固い拳が俺目がけて飛んできた。



ゴツン!と鈍い音がして、頭に激痛が走る。




「いってぇなクソ親父!!」


「うるせーよバカ息子!! てめぇまた遅刻しただろ! 学校から電話入ったんだよ!!」




顔見せろって説教かよ。



あの体育教師め、チクリやがったな。覚えてろ。