確か彼氏いるって言ってたな、と。
やっぱ年上だったんだ。
見た感じ大学生くらい。
まだ付き合ってたのか。
別れて未練があるってのは、俺の勘違いだったってわけ。
解決はした──でも。
俺の中には、何か簡単に答えが見つからないような。
得体の知れない感情が残った。
そして、そいつの隣で楽しそうに笑う歩を見たら。
無性にイライラして。
…マジ面白くねぇ。
このまま走っていって2人の間に割り込もうか…なんてバカな考えが浮かぶ。
だけど思うだけで行動には移せなかった。
“思い立ったら即行動”してきたはずなのに、この時ばかりは足に根が生えたように動けずにいた。
──俺は、ようやく気が付く。
男と一緒にいる歩を見て、これが“嫉妬”ってやつだということに。
今まで無縁だったはずの醜い感情。
こんな形で経験することになるとは思わなかった。
賢が言った言葉の意味も、こんな形で理解するとは思わなかった。
俺、あいつのこと好きになってたのか?