すました顔で廊下を歩いている俺に、隣から一言。
毎回言われていると、うん。
あれだ。
耳にタコが出来るってやつ。
「賢は彼女作らんの?」
「別にいーよ」
「さては俺のことマジなのか」
「とりあえず一発殴らせて」
「わりぃ、冗談だよ!」
賢が心配していることくらい、バカな俺だって分かってる。
でも止める気はない。
自他共に認める女好きの俺が、女から遠ざかるってのが無理な話。
「そんなことばっかして、あとで後悔すんなよ」
賢はボソッと呟いた。
言い方こそ投げやりな感じだったけれど、この言葉の重みを知るのは、もう少し先のこととなる。