俺の姿を確認すると回れ右をして背を向けた。
「おい!」
「ん?」
俺の叫びに反応したのは歩ではなく、近くにいた体育教師。
「東條っまた遅刻か!」
「ちげーよ! バイクがぶっ壊れて徒歩で来たから…」
「バ…っバイクでの通学は禁止されているだろう!!」
「嘘!! 今の嘘!」
「コラ! 逃げるな!!」
猛ダッシュを決め込んだ俺の後ろで、怒鳴り声が聞こえる。
追いかけてこないかと振り返った時…
今まで見たことない笑顔を見せる歩が目に入った。
「──…っ」
心臓がドクンと音を立てた。
「なんだよこれ…」
しんと静まり返った廊下で、ギュッと制服を掴んだ。
胸の辺りをきつく。
走ったせいもある。
でも、この動悸は──
それだけが原因じゃない気がした。
「アイツ…笑えるんだ」