「…気付いてねーのかよ」


「え、何が?」


「っんでもねぇよこの鈍感男!!」


「あ!?」




賢は「てめーのことだろ!」とか「いい加減気付けよ!」とかひとしきり喚くと、すっきりしたように屋上を出ていった。




「…意味、分かんねーし」












あのあと俺なりに、賢の言葉について考えてみた。



「鈍感」

「気付け」

「自分のこと」



…なんのことだかさっぱりだ。



どういうことかと問い詰めてみたものの、「だから自分で分かるだろ」と冷たい一言。



一体何が分かる、この俺に。



洗面所で寝起きのまま歯磨きしながら、出そうもない答えを探していた。




学校に着くと、ご苦労なことに1限から体育の授業をしている生徒達。



グラウンドに高い声が響いている。




「先生、頭痛いんで保健室行っていいですか?」




女特有の甲高い声の中、その言葉だけがやけに鮮明に聞こえた。




「水谷か…じゃあ行きなさい」





そうしてこちらに歩み寄ってきた“アイツ”は。




「………」