「アンタが前勝手に自己紹介したんじゃん」


「あ〜…そーだっけ」


「ていうか──」




一旦そこで切ると、付け加えた。




「社長の息子っていうのアンタだったんだね」




…またか。


俺はそれを聞いて小さく溜め息をついた。



やっぱりコイツも同じか。




「…どーしたの?」




今まで一方的に喋っていた俺がいきなり黙り込んだからか。



歩は怪訝そうな眼差しを向けた。




「…別になんでもねーよ」




思ったより低い声が出て、自分でも不機嫌な印象を与えていると感じた。



俺を見る目は、大体みんな同じだった。



あの若さにして、大企業のトップにまで上り詰めた親父。



息子である俺はいつも比較され続けていた。



「社長の息子なのに」


「親はちゃんとしてるのに」



そんな目。



親は嫌いじゃないが、「比較される」のは嫌いだ。



俺を見ようとしない奴らが多過ぎる。



俺と親父は違う。



親父が社長だからなんなんだと。


必ずしも良い子を演じなければいけないのかと。