錆びたドアが独特な音を立ててゆっくりと開いた。
「…あ」
俺が声を出したのと、ドアが閉まりかけたのはほぼ同時だった。
「おい! 今ばっちり目ぇ合っただろーがよ!」
向こう側の相手に怒鳴る。
そして心底嫌そうな顔で入ってきたのは歩だった。
「なんでいんだよ」
ボソッと呟く歩。
「いちゃ悪りぃのかよ」
「…最悪」
「せっかく来たなら帰んなくてもいーだろ」
「別にいなくてもいーじゃん」
いちいちムカつく女だ。
今改めてそう思った。
色々と口論した結果、強引さに負けた歩は…
フェンスにもたれ掛かった俺の隣──いや、正確には2mくらい離れた隣に座った。
「何この距離」
最後までシカト決め込む気だ。
歩は平然と本に視線を落としている。
懲りずに、立ち上がりドカッと隣に腰を据える。
「何読んでんの」
どうせまた無視されるんだと思っていた俺は。
「切ない話」
普通に答えが返ってきて少しびっくりした。