カーテン越しにクスクスと笑う声が聞こえる。
「言っとくけど俺、疲れ知らずだから」
「そうなの? 早寝早起きは心がけなさいね」
「賢にも言われてるしー!」
しばらくの間、こんな感じで雑談をしていた。
するとノックの音がして、「失礼しまーす」と声がした。
「柚木(ゆずき)さん、どうしたの?」
「歩来ませんでしたー?」
“歩”という単語に思わず反応し、カーテンを開けて顔を出す。
「あ…、東條くん」
歩と一緒にいる、赤い髪をした、“柚木”と呼ばれた子。
大きな目を更に丸くして、驚いたように俺の名前を呼んだ。
「え、俺のこと知ってんの?」
「まぁ…。有名だから」
「へぇ」
あえて何が有名なのかは聞かなかった。
「柚木ってゆーの?」
「うん。柚木 さゆみ」
だから“さゆ”なのか。
歩の呼び方を思い出して、勝手に納得。
保健の先生は「お客様がいらっしゃいます」という放送を聞いて出ていった。
「さゆちゃんってさぁ、いつから歩の友達なの?」