そんな男と、それを気にも留めない女。
することといったら1つ。
「奈津…」
甘い声が俺を呼ぶ。
何度も、何度も。
それに応えるように体を動かす。
触れ合った体は熱を帯びる。
まるで、気持ちが通じ合っているかのように。
錯覚を起こしてしまいそうなほど。
ただ純粋に、お互いを求め合う。
お互いの“体”だけを。
繰り返し名前を呼ばれる、その行為中。
俺がその女の名前を呼ぶことはなかった。
行為が終わった後。
俺はベッドの上で煙草をふかす。
隣からは規則的な寝息が聞こえる。
煙を目一杯肺に溜め、上に向かって吐き出す。
煙と一緒に、溜め息も。
不思議と疲労感はなくて。
白く濁った煙を、ただボーッと見つめていた。
放心状態。空っぽ。
まさにそんな感じ。
「う〜…ん」
女が寝返りを打つ。
煙草を灰皿に押し付け、火を消した。
「あ、おはよー奈津」
「ん。はよ」
「え? もう朝!?」