ブチッ!
…という効果音が聞こえてきそうなくらい、賢は勢いよく電話を切った。
「相変わらず冗談通じねー」
まだ多少耳がキンキンするが、起き上がって支度を始めた。
親は早くに仕事に出て、今は1人。
洗面所に行くまでフラフラしながら歩いていった。
鏡の前で顔を洗い、歯を磨く。
最後に、寝癖のついた金髪をワックスで固める。
食卓には母親の手作りの朝飯が置いてあったが、食べずに家を出た。
歩いて10分かかるかかからないかの所に位置する、私立T学園高等学校。通称T学。
それが俺の通う学校。
私立ということで部活動に力を入れている。
部活をやっていない俺には無関係とも言えるが。
特別目立ったこともなく、いたって普通の学校。
俺は徒歩並みのスピードでチャリを走らせ、そこに向かった。
…生徒玄関は1つしかないわけで。
見つかる確率が高い気もする。
今は9時半。
丁度授業中であってほしい。
「──奈津!」
「うぉっ!!」