放課後。



部活には入っていないし、学校に残るような用事もない。


ということで、俺はさっさと帰り支度を済ませ、玄関に向かっていた。


確か今日は遊びに行く予定があった。




「あの子名前なんだったっけな…」




独り言を呟きながら階段を下りる。


潰し履きした靴が、パカパカとスリッパのような音を奏でた。


腰までずり落ちたズボンのポケットから携帯を取り出す。


〈受信メール3件〉の表示があり、3件とも女からのメールだった。


《約束忘れてないよね?》


《今度いつ会ってくれる?》


《暇なら遊ぼ》


言い回しは違うが、大体意味は同じだった。


俺がすることなんて限られてるから、当たり前といえば当たり前。


携帯をしまい、教室の前を通りかかった時──。


開いたドアの隙間から、ある人物を目撃した。




「…歩」




後ろ姿だけだったが、誰だかすぐに分かった。



茶色い髪が夕日でオレンジ色に見える。


その様子がとても綺麗で神秘的な感じがした。