クラス知れただけでも十分だ。
あとは今までの経験しかない。
どうやったら“あの”歩をオトせるか。
賢はもう慣れっこなのか、はたまた興味がないだけなのか。
携帯をいじりながらどうでもよさそうに、
「お前も物好きだよなぁ。そこらへんにいる体だけの相手なら、嫌ってほど寄ってくんのに」
と口にした。
「分かってねーなぁ」
喉を鳴らしてペットボトルのお茶を飲む。
「だってよー、すぐクリア出来るゲームより難しい方がやりがいあんじゃん」
「…まぁ、分からなくもない」
「難攻不落の城を崩すのが楽しいんだろ」
飲み終わったお茶のペットボトルを、少し離れたゴミ箱へ放る。
ガツンという鈍い音と共に、吸い込まれるように落ちていった。
「…奈津」
急に深刻そうな顔になった賢。
「……お前さぁ」
「な、なんだよ?」
「…難攻不落って言葉、よく知ってたな」
「刺すぞてめぇ」