その日から、俺はよく歩を見かけるようになった。


思った通り…いや、思った以上に綺麗な奴だった。


目鼻立ちのくっきりした顔に、濃すぎないメイクがよく映える。


スタイルはモデル並みで、歩くたびに明るい茶髪がなびく。


染めてるのに、傷んでなさそうな艶やかな髪。


少し切れ長の瞳が更に“美人”だということを強調させた。


確かに冷たそうな、近寄りにくい雰囲気。


なんで今まで気が付かなかったのか、自分でも不思議なくらいだ。


全然興味なかったし、1年の後半から学校にあまり来なかったらしいから仕方ないかもしれないけど。




「奈津〜」




昼休み。


購買から帰ってきた賢が、だるそうに声を掛けてきた。




「どーしたぁ、元気ねぇじゃん!」


「お前のテンションが高いだけだろ。例のターゲットと進展あったのか?」


「んーん、クラス知っただけ」


「何もそれらしきことねーじゃん」


「誰もあるとは言ってねー」




確かに…と呟いてパンを頬張る賢を横目で見て、ニヤリと笑ってみせる。