合わない俺の視線を辿り、美紗は歩の後ろ姿を目に留めた。
「あ、あの人知ってる〜」
「え?」
「めっちゃ美人さんだよね」
「知らねぇけど…どんな奴?」
「うちはあんま詳しくないよ。ただかなりの男嫌いみたい」
男嫌い?
「何それ。なんかのビョーキ?」
「どっちかってゆーとなっちゃんの方が病気だよね。女依存症という名の」
「うっせーよ」
「だからさぁ」
少し残念そうにしてみせたが、表情を一変させ、明らかに笑いを堪えている。
「狙ってるならやめときなよ」
トドメの一言。
まるで「アンタは問題外よ」とでも言うように。
だがそんなことで「はい、そーですか。じゃあやめときます」なんて、引き下がるほど。
「なっちゃん、俺様だから聞かないだろうけどね」
俺、基本自己中だから。
欲しいもんは手に入れないと気が済まないタイプ。
興味を持ったら即行動。
そんな厄介な性格のせいで、賢はいつも苦労しているだろうけど。