「会うのも無理なんて…肝っ玉の小さい男ねぇ」


「あ゙?」


「オチないって言ってんのにどうして拒むのさ。そんなに自信があるのかしら…」




芝居がかった美紗の口調が、俺の妙な闘争心に火を点ける。


そこまで言うなら見てやろうじゃねーか。


マジでオトす気はなかったものの、まんまとのせられた俺は、美紗の言う女のクラスへ向かっていた。


俺達が着いたのは、2ー3のプレートが掛かった教室。


美紗はドアから中を覗き込む。




「あっれ〜いない?」




ここまで来たのに肝心の人がいない様子。




「いねーのかよ」




顔は知らないが俺も同じように中を見渡してみる。



すると──…




「早く!! 次移動しなきゃだよっ」


「待ってよ、さゆ」




目の前を、すぐ横を。



“あの女”が通り過ぎたんだ。




──水谷 歩。




「遅刻するじゃん!」


「そんなに急がなくたって間に合うよ」




歩とは対照的に、背の低い栗色の髪をした友達と、ドアから出ていく。




「ごめん、いないみたいだわー…って、なっちゃん?」